株式会社NTTドコモ・フィナンシャルグループ様

「dカード」基幹システムの開発に生成AI「Claude」を本格適用。
“初稿正解率90%”のコードを数分で生成し、飛躍的な工期短縮を実現。

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Summary

  • ミッションクリティカルな基幹システムの開発に生成AI「Claude」を本格適用。
  • AWSおよびAnthropicと連携し、TISIの膨大な開発知見に基づくコード生成の仕組みを構築。
  • 初稿正解率90%を達成し、人間が1週間要するような開発工程を数分へ短縮。
  • 要件定義やテストなど開発全工程のAI適用を進め、完全自動化を目指す。

背景

前田 直士氏

――対象のdカード基幹システムの役割は?

前田: クレジットカード「dカード」の入会、決済承認、請求確定など、約1,800万会員が関わるほぼすべての業務を支える基幹システムです。
本システムは2022年、TISIが提供するクレジット事業者向け基盤をベースに、当社の要件に合わせて機能を開発し構築したものです。24時間365日の安定稼働が絶対条件の、極めてミッションクリティカルなシステムです。

――開発に生成AI(以下、AI)を活用することとしたきっかけは?

宮崎: 一番は開発スピードに対する危機感でした。世の中の潮流として開発にAIを利用する企業が増える中、我々も一歩踏み出してノウハウを蓄積していく必要がある。利便性を向上させるため、開発スピードをもっと速めたいと感じていました。

宮崎 智文氏
杉本 直樹

前田: dカードのビジネスを担当する現場でも、利用者様が求める新機能を迅速に実装したいという思いを強くしていました。そんな折、2026年6月を目処にdカードをスマホ決済に対応させる新機能を開発する目標が浮上しました。基幹の根幹部分とは異なる新機能であればリスクを抑えて挑戦ができると判断し、TISIへ「AIで開発を効率化できないだろうか」と相談したのが始まりです。

杉本(TISI): ちょうどその頃、TISIでも追加開発の効率化に向け、AI活用のロードマップを定めていました。そこで、AIによる開発の第1弾として、ぜひ進めさせてほしいとお願いしました。

選択

――開発の“座組”にあたりTISIがAWSを選定した理由は? AWS側のご担当者も交えてお話を伺います

杉本(TISI): 単にクラウド基盤にLLM(大規模言語モデル)を組み込めば開発ができるというものではありません。基幹システムに関わる開発では、大量のデータをどう安全に処理し、いかに高い精度で指示を出すかが鍵になります。その点、AWSのチームはAIの実行基盤となる「インフラ」と「LLMの特性」の双方の“勘所”を熟知したプロフェッショナル集団であり、技術面でも深く相談に乗ってもらえるパートナーだと考えました。

島野(AWS): まずインフラの安全面で提案したのがAWSサービス「Amazon Bedrock」です。入力データが学習に利用されないことがAWSサービス規約と次世代推論エンジンのアーキテクチャで担保されており、プロンプトやコードの漏洩を防ぐことができます。強固なセキュリティ基盤を構築できる点が、基幹システムの開発に適していると考えました。

――生成AI「Claude」を選定した経緯は?

杉本(TISI): 複数のLLMを比較検討した結果、プログラム構造の理解力においてAnthropicのClaudeに一日の長があると判断しました。

島野(AWS): 実際、Claudeは、LLMのソフトウェアエンジニアリング能力を測定する「SWE-bench」で世界最高峰の成績を収めていました。その性能は、日本の金融システムの自動開発に最適だと考え推薦しました。

宮崎: プロジェクトに入る前、TISIから「考えうるベストの布陣で臨むので安心して任せてほしい」と説明がありました。システムを熟知するTISI、強固なセキュリティガバナンスのAWS、そしてAnthropic提供のClaude。この三位一体の座組で、未知の領域に安心して挑むことができました。

島野 貞純氏

開発

――開発工程のどの部分にAIを適用したのでしょうか?

杉本(TISI): 通常の開発案件は、①何をつくるかを決める「要件定義」、②日本語で設計書を書く「設計」、③設計書を見てコードを書く「プログラミング」、④動作検証する「テスト」の流れで進めます。今回AIを適用したのは③のプログラミング工程です。
従来は、エンジニアが日本語の設計書を読み解いてコードを書いていましたが、今回はAIに設計書を読み込ませ自動生成するというものです。TISIの厳格なルールでつくられた設計書は論理構造が明確であり、AIにとって精度の高いプロンプト(指示書)として機能します。

――「設計書」を読ませるだけで精度の高いコードが自動生成されるのですか?

杉本(TISI): いえ、単に読ませるだけでは、まだ不十分です。まず、設計情報をAIが効率よく読み解いて理解を深められるよう、ソースとなる設計書データの最適化を行いました。

島野(AWS): 具体的には、設計書を「Markdown形式」に自動変換する方法です。内容を変えることなく、見出しや箇条書きなどの構造を明示し、AIに対する指示がより高精度になるようにしました。

杉本(TISI): また、精度向上の難所となったのが、設計書には明記されない「開発上の共通ルール」をどうAIに教えるかでした。
たとえば、「処理失敗時は特定の形式でエラーログを記録し、安全に停止させる」といった個別指示が設計書に書かれていなくても、エンジニアが長年の慣習として当然のように守っている『作法』のことです。これをAIに理解させないと、出力コードの統一感が維持できません。

島野(AWS): これまでTISIが蓄積してきた大量の設計書、何百万行ものコードなどの資産を都度すべてAIに教えるのは非効率的です。そこで、今回のコード生成作業に必要な文脈だけを抽出して提示する「コンテキストエンジニアリング」の仕組みを共同構築しました。これにより、TISIが持つ深い業務知見という「文脈(コンテキスト)」をAIに正しく理解させ、高い正解率につなげることができました。

効果

――AIによる開発で、工程はどのように効率化されましたか?

宮崎: 新機能の開発を終え、スピードも品質も「これなら次もいける」という確信が得られました。TISIの検証では、AIが自動生成したコードの初稿正解率は90%でした。人間(95%)に比べてやや劣るように見えますが、スピードを加味すると俄然AIが有利になります。人間が1週間かかるコード作成でも、AIなら数分で完了します。人間でもAIでもどちらも最終的に人間による検品を行うなら、初稿を圧倒的に速く出せるAIに任せる方が、トータルの工程を大幅に短縮できます。

宮崎: これまでは、基幹システムの開発にAIを適用するのはハードルが高いのではと危惧していました。しかし今回、TISI・AWS・Anthropicが協力し「開発の型(標準)」をつくれたことが、当社にとって大きな財産になったと感じます。

――プログラミング以外の工程でAIを活用する構想は?

杉本(TISI): 既にレビューやテストの自動化を試行中です。また、より上流工程の設計書や要件定義書の作成についても自動化を目標としています。私が構想しているのは、各工程を受け持つAIエージェントが自律的に対話し、開発工程を完全に自動化することです。

前田: それが実現すれば、当社側が実施する要件定義や受入試験の負荷も減らせます。特定のベテラン社員に頼ってきた属人化の解消で、人間は、より創造的な企画等の業務へシフトしていくことができるでしょう。

――最後にTISIへの期待をお聞かせください

宮崎: 今回の成果は、AIの能力と、TISIが積み上げた開発の知見が融合したことで得られたものです。人間とほぼ変わらない高精度なコードを出力できた成果を高く評価しています。

前田: TISIは、dカードの業務とシステムを誰よりも深く知るパートナーとして、AIによる開発スピードを極限まで高めていただきたい。ビジネス成長を牽引する、なくてはならない原動力となることを期待しています。

Company Data

株式会社NTTドコモ・フィナンシャルグループ
本社:東京都千代田区永田町2丁目11番1号 山王パークタワー
設立:2025年6月
事業開始:2026年7月1日
事業内容:金融サービス事業の提供、グループ金融事業の統括・経営管理、顧客基盤を活用した金融サービスの拡販・運営
URL:https://www.docomo-fg.com/

TISI担当者から

杉本 直樹

TISI株式会社
デジタルイノベーション事業本部
クレジットSaaS第2事業部
兼 クレジットSaaS第1事業部
フェロー
杉本 直樹

「ミッションクリティカルな基幹システム開発にAIは不向き」という常識を超え、極めて高精度なアウトプットを実現できたことに大きな手応えを感じています。dカードの基幹システムは規模が大きく、各機能の関連性も非常に複雑なため、それをいかにAIに“正しく理解させるか”が最大の壁でした。
今回、AWS様とAnthropic様の強力なご支援のもと、設計書に書かれていない暗黙のルールの提示や、金融システムで求められる厳格な論理構造化など、TISIだけでは解決できない技術的課題を乗り越えることができました。AIによる基幹システム開発を、ベストな協力体制で乗り越えたことは、TISIにとって非常に大きな収穫です。
今後は、上流から下流まですべての工程をAIでつなぐ「全自動化」の実現を目指し、お客様のビジネス成長のお役に立てればと思います。

※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。

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更新日時:2026年7月30日 11時18分