スズキ株式会社様
「SAP S/4HANA Cloud Private Edition」で“AI-ready”な経営基盤を構築。
レガシーな業務システムを順次統合し、データ利活用によるDXを加速。
Summary
- AI対応「SAP S/4HANA」へのバージョンアップおよびクラウド基盤移行をトータル支援。
- 前例の少ない「Fioriサーバ統合」を確かな技術で実現。
- 6社が関与する複雑・大規模なプロジェクトの円滑な進捗に貢献。
- 本番稼働後の不具合「0件」という高品質な移行を達成。
背景
――「SAP S/4HANA」はいつ、どのような目的で導入されましたか?
横倉: 当社は、四輪車や二輪車、そして船外機をはじめとするマリン事業などをグローバルに手がけています。国内における財務会計・購買領域の基幹システムとして、2017年にSAP S/4HANAを導入し、SAP社が提供するクラウド基盤「HEC」上で運用してきました。
――今回、新バージョンへの移行を決めた理由は?
横倉:
一番の理由は、基幹業務の中核であるSAP S/4HANAで、最先端のAIをダイレクトに活用したかったからです。2023年リリースのバージョンからAIが標準機能として本格的に組み込まれ始めたことで、これを当社がDX戦略で目指す「生産性の向上」を一気に加速する好機ととらえました。
ERPに搭載されたAI機能を活用するとともに、必要に応じて外部のAIツールも柔軟に組み合わせ、業務効率化に全方位で活用していこうという構想です。
そして、今回の刷新を機に、既存のレガシーシステムをAIが使える共通基盤(プラットフォーム)に順次統合し、データの一元化による全社DXを加速させていきたいと考えました。
村瀬: AIの利用イメージは、たとえば自然言語で質問すると次にすべき操作がナビゲーションされる。あるいは、過去の実績からサプライチェーンの遅延リスクを自動で警告してくれるといったようなものです。ERPとAIが一体となった仕組みは、当社の業務効率化に大きく貢献することが見込まれました。
――バージョンアップと同時にクラウドインフラも変更したそうですね。
村瀬:
SAP社が“AI-ready”の環境として推奨しているのが、アプリケーションSAP S/4HANAの最新版とハイパースケーラー(Amazon、マイクロソフト、Googleなど)のクラウド基盤を組み合わせた「SAP S/4HANA Cloud Private Edition」でした。
それまで使っていたHECは、SAP社独自のデータセンターで運営されるクラウド基盤であるのに対し、ハイパースケーラーのクラウドを選択できるのが最大の特長です。クラウドインフラの移行で、バックアップ機能の強化や、中長期的な運用コストの削減といったメリットにも期待しました。
選択
――本プロジェクトにTISIが加わった経緯について教えてください。
村瀬:
今回、ハイパースケーラーのクラウド基盤に移行することから、この領域に明るいSIerに支援してほしいと考えました。HECを導入支援したコンサルティング会社に相談したところ、技術力・コスト競争力を兼ね備えたSIerとして紹介されたのがTISIでした。
本プロジェクトは、当社をはじめ、アプリケーション保守ベンダー2社、PMOを務めるコンサルティング会社、SAP、そしてTISIと、プレイヤーが6社にも及びます。そのためTISIには、バージョンアップおよび移行の実務面だけでなく、当社とともに全体を強力に牽引するプロジェクトリーディングの役割にも期待しました。
――プロジェクトを円滑に進めるうえで、難しさが予想されたテーマは何でしたか?
古山: 移行作業時のシステム停止時間(ダウンタイム)の制約です。決算業務への影響を考えると、本番移行用に使えるダウンタイムは、年末年始の数日間に限られます。プロジェクト開始の時点で、年末まで約10カ月。それまでに完璧に準備を整えたうえで、短いダウンタイム内で確実に移行作業を完了させる必要があります。この機会を逃せば、カットオーバーが大きく遅延するリスクがあり、プレッシャーを感じていました。
村瀬: もう一つの課題が、Fioriサーバの統合でした。従来のHEC環境では、「SAP本体のサーバ」と、画面システムを受け持つ「Fioriサーバ」を別々に稼働させていました。これを、直近のSAPが推奨する標準の構成である同一サーバ(インスタンス)への統合を図る方針としました。これにより、長期的に障害発生の確率を下げ、運用負荷削減の大きなメリットがありますが、当時は国内での統合事例がまだ少なく、TISIの技術力に期待しました。
移行
――プロジェクトを効率的に進めるため、最初のアセスメントフェーズでは何から着手しましたか?
古山:
まず、TISIが実際の本番と同じ検証環境をハイパースケーラーのクラウド上に早期に用意し、確実に年末年始の期間内で正しく移行できるかを確認するPoCを実施しました。
また、TISI独自の移行アセスメントツールをフル活用し、新環境移行後のアプリケーションへの影響を調査しました。ここでは、従来のアドオンのままで業務に支障が出ないか等を事前に洗い出し、対策に必要な工数をシミュレーションすることで“本番移行時期までに万全な準備を完了できる”という裏付けが得られました。
当社側で最も手がかかったのは、各業務部門の担当者に、既存機能とのギャップが生じていないかを確認してもらうテスト工程でした。検証環境のつくり込みを含め、スケジュールに遅れが出ないようTISIと密に連携しながら進めました。
――プロジェクトにおいて、TISIが担った役割や推進力の印象をお聞かせください。
古山:
Fioriサーバ統合については、私が計画を立案し、TISIに具体的な移行手順をつくってもらう役割分担で進めました。TISIが非常に精緻な移行手順を考案してくれたおかげで、無事に統合を成功させることができました。
また、TISIは担当の領域以外にも非常に明るく、本当に頼りがいがありました。「どのベンダーの担当か切り分けが難しいグレーゾーンの課題」に対しても、プロアクティブに原因を調査し、的確に解決へ導いてくれました。
横倉:
本番移行も、TISIの手際のよい進捗管理に支えられ、計画どおりに完遂できました。移行は2025年の年末から年始にかけて9日間で行われましたが、TISIは事前に、関係6社が分刻みで動く緻密なタイムライン(手順書)を用意し、プロジェクトを強力にリードしてくれました。
当社は行動理念として「クイックに仕事を回す(中小企業型経営)」を掲げていますが、TISIは大企業でありながらも、当社のスピード感に合わせた機動的な動きでプロジェクトを牽引してくれたことが印象に残っています。
効果
――移行後の安定性や、統合基盤としての期待をお聞かせください。
古山: 本番稼働後の不具合は0件で、早期に安定稼働できたことは本当に素晴らしい成果でした。新たなERP環境は、今後さまざまなレガシー業務システムを統合していく基盤となるため、何よりも盤石な信頼性が欠かせません。万全なかたちでスタートを切れたことは、今後の全社DXの成功を確信させる大きな一歩になったと感じています。
――最後に、今回のERP刷新の効果と、TISIに対する評価をお願いします。
横倉:
「SAP S/4HANA Cloud Private Edition」による新たな経営基盤が整ったことで、標準搭載された最先端のAIとSAPが提供するAI機能(Joule)を活用し、データ利活用によるDXを力強く推進できるようになりました。
そして運用面でも、スマートフォンアプリのように頻繁かつスムーズにバージョンアップを重ね、常に最新のAI機能の恩恵を受け続けられるメリットがあります。
村瀬:
TISIには、既に他のSAP関連プロジェクトについても、複数件お願いをしています。
一貫して、我々と同じ目線に立ち、困りごとを解決しようとする姿勢が非常にありがたく感じます。伴走パートナーとして、引き続き大きな期待を寄せています。
Company Data
スズキ株式会社
本社:静岡県浜松市中央区高塚町300
設立:1920年
事業内容:四輪車、二輪車、船外機および電動車いす他の製造販売
URL:https://www.suzuki.co.jp/
TISI担当者から
TISI株式会社
産業公共事業本部 ERPコンサルティング第1事業部
エンタープライズコンサルティング第3部
エキスパート
豊島 智光
本番移行は9日間という長い期間におよび、関係する6社がバトンをつなぐ大がかりなものでした。事前にスズキ様とともに綿密な移行推進ルールを設計し、本番に臨みました。
移行期間中は、夜間の作業時間帯もスズキ様と常に進捗を共有し、技術面での課題も逐次相談して解決を図っていきました。ワンチームとしての一体感を持って厳しい局面を乗り切れたと感じています。
一般的に、SAP ERPの大規模なバージョンアップは、本番稼働後の数カ月間は予期せぬ不具合対応に追われるケースが珍しくありません。しかし今回、不具合はゼロ件で、お客様から「安定稼働できています」と感謝の言葉をいただけたことは、エンジニアとしてこの上ない喜びでした。
TISI株式会社
産業公共事業本部 産業公共営業統括部
エンタープライズコンサルティング営業部
セクションチーフ
池村 孝展
プロジェクトを通じて、お客様から「TISIは単なるパートナーではなく、同じ目標に向かって取り組む一つのチームとして対応してくれた」とのお言葉をいただいたことが強く印象に残っています。お客様と一体となって課題解決に取り組めたことを大変うれしく感じています。
今回構築した基盤は、スズキ様のDX推進を加速する重要な一歩であると考えています。TISIは今後も、ERP領域にとどまらず、AIやデータ活用をはじめとする幅広いIT領域においてスズキ様の変革をご支援し、持続的な成長と競争力強化の実現に向けたパートナーとして伴走してまいります。
※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。