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【合併】AI時代、独立系SIer「TISI」が描く成長戦略は?

MEDIA TIE-UP#07

【合併】AI時代、独立系SIer「TISI」が描く成長戦略は?

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これまで、DXを追い風にして成長を続けてきたSIer(システムインテグレーター)だが、生成AIの台頭やIT人材不足、企業の内製化へのシフトにより、大きな転換期を迎えている。

従来は、顧客企業から依頼を受け、システム開発する受託型開発事業がビジネスの多くを占めたが、昨今ではそれに加えて、高付加価値なコンサルティングや、自社ソリューション主導のビジネスモデルの転換が起きている。

そんな激変する事業環境のなか、独立系の大手SIerであるTISと、そのグループ会社であるインテックが2026年7月1日に合併し「TISI(ティアイエスアイ)株式会社」が誕生した。

なぜ両社は一つになる道を選んだのか。合併の号令をかけたTISI 代表取締役 社長執行役員の岡本安史氏に、二社の立ち位置から合併の背景、生まれるシナジー、そして成長戦略を聞いた。

なぜ、いまTISとインテックは合併したのか

そもそも合併前のTISとインテックは、それぞれどんな強みを持っていたのでしょうか?
TISは、親会社を持たない独立系のSIerとして国内トップクラスの規模を有しています。
多種多様な業界・業種で3,000社以上のお客様との取引があり、特に金融・決済領域において、クレジットカードの基幹システム開発で国内シェア約50%。ブランドデビットカードの関連サービス提供・システム開発で約80%の国内シェアがあります。
大規模なシステムを構築して納品し、その後、システム保守を通じてエンハンス(既存システムや製品に機能を追加したり、性能を良くしたりする改善作業全般のこと)していくビジネスに数多く取り組んできました。
TISI株式会社 代表取締役 社長執行役員 岡本安史
一方のインテックは1964年創立、富山を創業の地とする会社で、全国に地域密着型の事業基盤を持ち、シリコンバレーには新規事業創出に向けたイノベーション拠点もあります。
産業分野をはじめ、自治体や金融機関、医療機関まで幅広い業種に精通し、EDI(企業間で受発注や請求書などの商取引データを通信を介して交換するシステム)をはじめとするサービスにも強みを持っています。
特に、クライアントのオフィスや現場に常駐・出向して業務を行う「オンサイト支援」で現場と密接に関わり、そこで培ったノウハウをパッケージ化して、多くの企業の課題解決に活かしてきました。
TISが東京・大阪・名古屋など大都市が中心のビジネス展開であるのに対して、インテックは日本全国をカバー。マーケットも、得意とするサービスの提供方法も異なります。
2016年から「TISインテックグループ」という事業持株体制になり、グループとして緩やかな連携を進めながらも、グループ各社の自主性を重視し、それぞれのビジネスモデルの強みを伸ばしていく「八ヶ岳経営」でこれまで歩んできました。
TISとインテックそれぞれの強みを活かした「八ヶ岳経営」の考え方を示す図
両社とも同じグループではあるのですが、あくまで会社としては別法人。社長も別、オペレーションも別という形でした。
今回の合併はそこからもう一段踏み込んで、商号もTISIに変え、一つの会社にするということです。
グループとして緩やかに連携する段階から、完全に一体になって意思決定する段階への移行なのです。
これまでの「八ヶ岳経営」のままでは、難しかったのでしょうか。
それぞれの会社が独自のビジネスモデルを伸ばすやり方は、決して間違いではありませんでした。
事業持株会社に移行した2016年以降、たとえばバックオフィス業務や品質管理の方法論など、共通化できる領域についてはグループとして着実に取り組みを進めてきた経緯があります。
一方、事業面での連携を高めていく取り組みについては、まだ伸びしろがあると感じていました。
さらに、グループ会社同士が横連携をしようとすると、一度TISの本社組織に情報を上げて、また現場に落とし込んでいくプロセスになるので、非効率で定着しづらい部分もあった。
約10年、グループとして経営を続けてきたわけですが、なぜこのタイミングで合併という決断を?
大きくは二つあります。一つは、SIerを取り巻く業界環境の変化、もう一つは、我々が掲げる「グループビジョン2032」の実現の加速です。
一つ目の業界環境の変化としては、事業者側がSIerを子会社化するといった動きが加速し、ITがお客様のビジネスと切り離せないぐらい密接になってきました。
その結果、企業の中核にSIerが入り、課題をクリアしていく時代がきていると捉えています。
二つ目としては、我々は長期経営方針である「グループビジョン2032」で、「未来への洞察力と課題解決力を備え、様々なプレイヤーの能力を統合し、共創を主導するポジションを確保、社会の変革に不可欠な存在となること」を事業指針に掲げています。
この実現に向けては、これまで以上にグループの力を結集し、スピード感を持って価値を創出できる体制が必要です。
外部環境が大きく変化するなかで、我々が描くビジョンの実現を加速させるためにはどうすればいいのか。この問いを、ずっと考え続けてきました。
その問いの答えが、いま合併することだった。
この業界再編を受け、私とインテックの社長である疋田(秀三氏)は、オンオフ問わず意見交換する場を定期的に設けてきました。
たとえば、2人のリーダーがいたとして、ビジネスタイムだと時間が取れずになかなか本音は分からないものです。
だからこそ、コミュニケーションの時間を意図的に作ることで、なかなかビジネスタイムでは語れないことも、腹を割って話せる関係性を築きたいと考えました。
すると、彼もSIerを取り巻く環境変化や、お客様にとってより大きな価値を生み出していくには、変革が必要だという危機感を持っていることがわかった。
二人で議論を重ねた結果、いま両社が合併し、資源集中と効率化、シナジーを加速させていく、という決断に至りました。
合併によって、企業としての規模はどう変わりますか。
新会社の「TISI」は1万人に迫る社員を抱える組織になり、業界内でも存在感を示せる規模だと考えています。
TISIがグループの中核となり、2033年度にはグループで売上高1兆円規模、営業利益率は15%超を目指しています。
数字だけを追いかけているわけではありませんが、独立系として成長を続けるには、これくらいの規模と収益力が必要だということです。

「総和拡大」で合併のシナジーを創出

とはいえ、合併すれば必然的にシナジーが生まれるわけではありませんよね。
おっしゃる通りです。ただ、先ほど申し上げたようにTISとインテックは、ビジネスモデルがまったく違うんですよね。
TISは、クレジットカードの基幹システム開発やブランドデビットカードのサービス提供、大型ERP導入など、大規模システムの提供に強みを持つ。
そして、インテックは産業分野をはじめ、自治体や金融、医療など幅広い業種のお客様に対して、その現場に深く入り込み、オンサイトで業務を支えるモデルに強みを持っている。
そこで培った業務知識やノウハウをもとに、EDIなどのサービスも展開してきました。
すでに、もともとインテックがオンサイトでサポートしていたお客様に、TISが強みを持つキャッシュレスの新規ビジネスを、一緒に考える動きがスタートした事例があり、芽が出つつあります。
私とインテックの疋田が危機感をともにし、意思疎通ができている。そして、現場ではすでにシナジーの兆しがでている。
実際に成果が見え始めることで、「ほら、できるじゃない」という空気感が組織全体に広がっていきます。ワンオペレーションにして、指揮命令系統を一本化すれば、この動きはもっと加速するはずです。
合併のキャッチフレーズが「総和拡大」だと伺いましたが、まさにその好例ですね。
これまでは、各本部が事業を持って拡大する「本部拡大」のイメージでした。そうではなく、横串を通しながら全体を大きくする。それが「総和拡大」です。
また、我々だけのオーガニックな成長だけでなく、M&Aも並行して実行していきます。
ポイントは三つで、一つ目は、お客様と資本関係を含めて密接に連携することで、お互いの事業を成長させていくこと。
お客様のグループ内にあるIT企業との資本提携や、合弁会社の設立なども視野に入れながら、お客様の事業や業務への理解をさらに深め、システム構築・運用にとどまらない価値提供を実現していきたい。
生成AIの活用なども、その一例です。
二つ目は、2023年にグループインした日本ICSのように、すでにレベニューのあるサービス型ビジネスを持つ企業との連携を広げていくこと。
日本ICSは、全国の税理士事務所(士業)やその顧問先である中小企業向けに、会計・税務パッケージを提供する企業です。
業界トップクラスのシェアを持っているので、TISIの強みと士業のネットワークをつなげると、その先の中小企業に新たなサービスを展開できる。
そして、三つ目が東南アジアです。現在の売上は440億円ほどありますが、それを1000億円まで伸ばしたい。
マーケットポートフォリオを広げておけば、マーケット環境の変化にも柔軟に対応できる。そうした意味でも東南アジアは重要な成長領域だと考えています。
TISIのM&A戦略におけるパートナー選定の考え方。顧客との関係深化につながる事業基盤や資本関係の強化、サービス型ビジネスの拡充による価値提供領域の拡大、東南アジアを中心としたグローバル成長に向けた事業ポートフォリオの強化
シナジーを生み出すために、他にも何か取り組まれていますか?
少し、方向性は違うのですが7月1日以降、社内の議論や業務で「旧TIS」「旧インテック」と、旧社名を背景にして話すことは禁止にしています。
過去にあった二つの会社を基軸にして会話するのではなく、TISIという一つの会社のために何をすべきかを議論したい。
合併の精神として「相手を尊重し、意見を出し合い、共にベストを追求する」を掲げていますが、まさにこの言葉を現場レベルで実装させたいんです。

生成AIは、本当にSIerを脅かすのか

昨今のビジネス環境を見ると、生成AIの影響に関する話題に事欠きません。SIerも、SaaSと同様に不要になるのではという意見もあります。
生成AIへの期待が高まった局面では、SIerの将来性について市場でさまざまな見方が広がりました。
ただ私は、この変化を脅威ではなく、AI産業革命という成長機会と捉えており、そのための備えを次期中期経営計画に織り込んでいます。
確かに、生成AIによって、SIerがエンジニアの稼働時間をベースに対価を得る「人月ビジネス」という前提は変わっていくと思います。
それは、収益の源泉が「投入した工数」から「提供した価値」へ移るということです。
2027年度から始まる次期中期経営計画では、この機会を確実に成果へ結びつけるため、三つの重点戦略を掲げています。
一つ目は、AI駆動開発による収益の質的転換です。生成AIを最大限活かす開発プロセスへ転換し、提供能力の拡張と収益モデルの高度化を同時に進めます。
二つ目は、業界・業務に特化したエージェント型AI、いわゆる「Vertical AI」のサービス化によるストック型収益の拡大です。
三つ目は、重点領域への戦略投資による収益モデルの多様化です。人月に依存しない収益の柱を複数持つことを目指します。
このうちVertical AIは、我々が長年強みとしてきた決済分野で先駆けて動き出しています。
2026年7月29日には、デジタル決済のトータルブランド「PAYCIERGE」に、決済領域に特化したVertical AIと専門人材を掛け合わせ、次世代決済プラットフォームへ進化させる戦略の始動を発表しました。
画像:GettyImages
発行・与信・不正検知・加盟店管理・請求・回収といった決済業務の高度化・効率化を、AIと人の両輪で実現していきます。
さらにステーブルコインなどの新たな決済手段とも連動させ、将来的にはAIが取引や決済の主体となる自律型の経済にも対応していく構想です。
日本のシステムは企業ごとに個別最適化されています。AIを実装して成果につなげるには、お客様の業務や意図を深く理解していることが大切です。
FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)という言葉が話題になるなど、海外発のAIエージェント企業が、基幹システム系にも手を伸ばし始めています。
オンサイトでお客様を支援しているメンバーは、まさにFDE化していかなければならないと思います。
※FDE
Forward Deployed Engineerの略で、顧客の現場に常駐または深く入り込み、自社のAI・ソフトウェア製品を用いて課題の発見から実装、運用までを一気通貫で支援するエンジニア職を指す。
私は、FDEという役割に非常に大きな可能性を感じています。三つの重点戦略とつなげて考えると、Vertical AIは導入がゴールではなく、そこからがスタートです。
現場でお客様の課題を解きながら、我々のプロダクトを進化させていけるのは、長年お客様の現場に密着してきたオンサイトメンバーです。
正常時の業務だけでなく、例外的な業務やそのときのシステム挙動まで熟知している。お客様と同等以上の業務知見を持ち、データの中身まで踏み込めるからこそ、さらにAIを活かせる。
これは一朝一夕で身につくものではありません。
三つの重点戦略にしても、FDEにしても、結局はすべて人が中心です。AIはあくまで手段であり、どの戦略も最後に動かすのは人です。
お客様の課題を本当に理解し、任せていただけるかどうかを決めるのは、人と人の繋がりにある。それは、経営層や現場での繋がり、全てにおいてです。
だからこそ、我々は技術力だけではなく、「信頼」を何より大切にしています。
ただ、これまで培った信頼や技術は資産とはいえ、まだTISIとしては一歩を踏み出したばかりです。
ビジネスとしては基幹システム開発を中心に価値提供を続けながらも、独立系SIerとしてお客様に対して信頼できる選択肢を広げていく。それが、TISIが描く成長戦略です。
我々は、選択肢を世の中にたくさん提供できる会社でありたい。
世の中に一つの選択肢しかなければ、その選択肢に頼るしかない。もう一つの選択肢があるから、世の中は健全になるものです。
その中で、お客様に選択され続けるためには、最新の技術を取り入れるだけでは不十分。技術を活用しつつ、提供価値をアップデートし続けなければ意味がない。
だからこそ我々は、新しい技術を追いかけるだけでなく、お客様が安心して選べる選択肢を提供し続けたいと考えています。
AIがどれだけ進化しても、お客様の事業や社会課題を深く理解し、最適な形で実装していくには、人の知見や対話が欠かせません。
我々は、AIを活用しながらも、人と技術の力を掛け合わせ、お客様や社会の変革に貢献する存在であり続けたい。それが、AI時代においてもお客様や社会から選ばれ続ける企業であるために、必要な姿勢だと思っています。
執筆:海達亮弥 編集:美濃島匡,海達亮弥 撮影:新江周平 デザイン:平井亜美
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2026-︎08-31 NewsPicks Brand Design

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