消耗する運用現場から脱却し、攻めの運用へ
―システム運用高度化の道しるべ「運用高度化ジャーニー」実践活用ガイド
著者:IT基盤技術企画部 梅谷麗
クラウド、オンプレ、レガシーなどが混在し、障害の一次切り分けが難しくなっている。
安定稼働を維持するために多くの工数とコストを投じているにもかかわらず、その実態は理解されないまま、さらなる効率化やコスト削減だけを求められる。
人員を削減せざるを得なかったが、その分現場が手一杯になり、品質への影響が出ている。
――このような状況に心当たりのある運用部門の責任者は、多いのではないでしょうか。
けっして現場の努力が足りないわけではありません。
日々の障害対応に追われる中で、目の前の課題を片付けることで精一杯になっている。
本当は、場当たり的な対応ではなく、抜本的な解決が必要だとわかっている。
しかし、立ち止まって整理する時間がなく、どこから手をつければよいのかもわからない。そうしているうちに、また新たな障害対応に追われてしまう。
そんな状態に陥っている運用現場が、あちこちに存在しています。
では、どこから手をつければよいのでしょう?
まずは、自社の運用が今どの状態にあるか――現在地を知ることから始まります。
現在地がわからなければ、何を優先し、何から着手すべきかの判断軸を持てません。判断軸がないまま、抜本的な対処に踏み出せない状態が続いているのです。
なぜ運用改善は進まないのか
現在地が見えないまま改善を進めようとすると、次のような状況に陥りがちです。
- やりたい施策はたくさんあるが、優先順位が決められない
- 世間と比べて、自社の運用レベルが高いのか低いのかわからない
- ベンダーや担当者によって意見が異なり、社内で判断軸が持てない
- AIや自動化の導入を検討しているが、自社の土台が対応できているか不明
こうした状況のまま個別のツール導入や部分的な自動化を進めると、自社の現在地に合わない施策を選んだり、優先度を誤ってしまったりして、うまく改善が進められません。土台が整っていない段階で高度な施策を導入しても、効果は限定的です。本当に必要な取り組みが何なのかを判断できていないまま、投じた労力やコストに見合う成果を得られない、ということが起きています。
AIや自動化が空回りするのは、「使いこなす準備」ができていないから
近年、AIや自動化を活用した運用改善への関心が高まっています。しかし実際には、AIや自動化に着手する以前の課題が残っているケースも少なくありません。
手順が標準化されていない状態でAIを導入しても、AIが学習すべき正しいデータが存在しません。インシデント管理が属人化していれば、そもそも何を自動化すべきかを定義できないか、特定の担当者のやり方だけを反映した、汎用性のない仕組みができあがってしまいます。
AIや自動化は魔法の技術ではありません。標準化→データ活用→自動化・AI活用という段階があり、自社が今どこにいるかによって、次に取るべき行動は変わります。
「何を導入するか」よりも先に、「自分たちが今どの状態にいるか」を把握することが重要です。
その現在地は、どう把握すればよいのか―運用高度化ジャーニーという指針
こうした「現在地の把握」から「次のアクション」までを、つながった形で整理するために、私たちは『運用高度化ジャーニー』を公開しています。(※運用高度化ジャーニーは2025年末に初版を公開し、2026年7月に1.1版を公開しました。初版公開時の解説コラムはこちら)
AIOps、SRE、運用DXなどの手法やオブザーバビリティの考え方など、運用改善に関する技術や手法は数多く存在します。しかし、これらは決して万能ではありません。同じ施策であっても、現場によって効果が出る場合と出ない場合があります。その違いを生む要因はさまざまですが、現在地を把握した上で、自分たちに必要な施策を選び、進め方を決めているかどうかは、再現性のある成功につながる重要な要素の一つです。
運用高度化ジャーニーは、運用の理想像・将来像を描き、段階的に改善・高度化していくためのロードマップを示したフレームです。
5段階の成熟度レベルと、以下の3つの構成要素によって、自社の現在地を整理できる構成になっています。
- 運用の自律度(どこまで自律的に運用できているか)
- 運用現場の状態(現場の標準化・属人化・データ活用の状態)
- QCDインパクト(品質・コスト・デリバリ(最新機能やサービスを迅速安全に届ける)の状態)
この3つの軸で現在地を確認することで、自社が今どのレベルにいるか、そして目指すべき将来像までの道筋が、客観的に見えてきます。
(上図は「運用高度化はじめてガイド」資料より抜粋。各レベルの詳細定義は以下資料の本編にてご確認いただけます。)
現状把握からネクストアクションへ―運用高度化ジャーニーの使い方
現状把握からネクストアクションの検討・決定は、次の5つのステップで整理を進めます。
①現在地の把握
②目指す姿の設定
③ギャップの特定
④優先領域の選定
⑤ネクストアクションの決定・実行
このうち、運用高度化ジャーニーが直接支援できるのは、①現在地の把握と②目指す姿の設定までです。
自社の運用が今どのレベルにあるか、そしてどのレベルを目指すべきかを、3つの構成要素(運用の自律度・運用現場の状態・QCDインパクト)に沿って整理できます。このとき、運用全体を一度に整理しようとすると、範囲が広すぎて抜け漏れが出てしまう可能性があるため、運用の機能単位など、ある程度領域を絞って、運用の機能ごとなどに分割し、レベルの確認を実施することをお勧めしています。
ステップ③以降のギャップ特定や優先領域の選定、具体的なアクションの検討は、①②で明確になった現在地と目指す姿をもとに、自社の状況に応じて検討していくことになります。今回公開する運用高度化ジャーニーでは、その検討の参考として、インシデント管理を例にしたネクストアクションの検討例も示しています。
具体例――インシデント管理で見るネクストアクション
例えばインシデント管理の領域において、自分たちの現在のレベルを把握して、取るべきアクションを検討してみます。
標準化が十分でない段階では、役割定義と対応手順の文書化が先決です。ある程度の標準化が進んだ段階であれば、定型作業の自動化やデータを活用した予兆検知が次の一手になります。
このように、運用高度化ジャーニーの解説資料では、インシデント管理を例に、レベル別・人技術プロセス別のネクストアクション検討例を具体的に示しています。「自社は今どこにいるか」を確認しながら、次の打ち手を考える際の参考としてご活用ください。
【ネクストアクション検討例の一部(資料より抜粋)】
(上図はインシデント管理におけるネクストアクション検討例の一部です。
各レベルにおける人・技術・プロセスそれぞれの具体的なアクションは、資料本編にてご確認いただけます。)
まとめ
『運用高度化ジャーニー』では、以下を体系的に整理しています。
- 5段階の成熟度レベルの定義
- レベル別に3つの構成要素の状態を定義(運用の自律度・現場の状態・QCDインパクト)
- インシデント管理を例にしたレベル別・人技術プロセス別のネクストアクション検討例
まずは、自社の運用が今どのレベルにあるかを確認することから始めてみてください。現在地が見えることが、抜本的な改善への第一歩になります。
運用改善の方向性を整理したい全ての方へ。どなたでもダウンロードいただけます。
また、自社の現状整理や進め方についてご相談したい場合は、運用高度化コンサルティングサービスもご覧ください。
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