「広く・深く」進む生成AI活用、次の焦点は事業成果
~各社の公表情報から見えた3つの提言~

「広く・深く」進む生成AI活用、次の焦点は事業成果~各社の公表情報から見えた3つの提言~

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背景

生成AIは今、「試す段階」から「業務で成果を出す段階」へと移行しつつあります。TISIでは企業における生成AI活用の実態変化を継続的に把握するため、2024年度から定期的にサーベイレポートを発刊しており、本レポートはその第4弾です。前回調査では、生成AIの活用がPoC(実証実験)から特定業務・部門へと広がり、作業効率化に加えて業務プロセスの自動化や新たな価値創出へ進化していることを明らかにしました。

今回は、その後約1年間でさらに進展した生成AI活用の最新動向を調査。全社展開の広がりやAIエージェント活用の実態、どの業務で活用が進んでいるのか、そして削減された時間や工数が実際に事業成果へ結び付いているのかを分析しました。企業の公開事例をもとに、活用トレンドや成果創出に向けた課題を読み解くとともに、AIガバナンスの高度化、AIエージェント活用を前提とした業務改革、効果の可視化と事業成果への還元といった今後の重要な取り組みについて提言します。

調査から判明した生成AIの利用実態

1 プライム上場企業が牽引する生成AI全社展開の波

生成AIの活用は、PoCや特定部門での利用段階から、全社展開へと着実に移行しています。全社展開の割合は第2回調査後半の25%から第4回調査では36%へ拡大し、PoC・実験的導入の割合は減少しました。特にプライム上場企業では全社展開の進展が顕著であり、生成AI活用は「試行」から「定着」のフェーズへ進化していることがうかがえます。また、この傾向は大企業だけでなく幅広い企業でも確認されており、推進体制やガバナンス整備を背景に、全社的な活用基盤の構築が進んでいます。

2 ユースケースの回帰の裏にある、AIの着実な高度化

第4回調査では、「作業効率化」が最も多いユースケースとなりました。しかし、その内容を見ると大きな変化が見られます。作業効率化や業務プロセス自動化においてAIエージェントの活用が大幅に増加しており、AIエージェント関連事例そのものも着実に拡大しています。表面的には効率化への回帰に見えるものの、実態としては単純な生成AI活用から、自律的に業務を支援・実行するAIエージェント活用へと高度化が進んでいます。生成AIは補助ツールから、業務プロセスを担う存在へと進化しつつあります。

3 詳細ユースケース別件数の増減が示す、生成AI活用の重点領域の変化

詳細ユースケースを見ると、データ処理自動化やシステム開発支援、システム運用支援など、業務プロセスに直接組み込まれる領域で活用が大きく拡大しています。その背景には、AIコーディングエージェントをはじめとする専門特化型ツールの普及があります。また、顧客対応の分野では、従来のチャットボットによる自動応答から、オペレーターへ回答候補や関連情報を提示する協働型の活用へと進化しています。生成AI活用の重点は、汎用ツールとしての利用から、業務フローに深く組み込まれた実践的な活用へとシフトしています。

4 生成AI活用は「広く・深く」へ

生成AI活用は、利用範囲の「広がり」と活用レベルの「深まり」の両面で進化しています。RAG活用はPoC段階から全社展開へと移行しつつあり、企業内の情報活用基盤として定着が進んでいます。一方で、AIエージェントの事例数は急増しているものの、多くは特定業務や部門での利用にとどまっています。現在は、活用範囲の拡大と実務適用が進む過渡期にあるといえます。RAGが全社展開へ至った成熟プロセスと同様に、AIエージェントも今後は全社展開へ移行していくことが期待されます。

5 時間削減に集中する定量効果と残された事業成果への接続課題

生成AIの利用範囲や活用レベルは着実に拡大していますが、その効果として公表されている内容の多くは、時間短縮や工数削減といった業務効率化に集中しています。一方で、売上向上やコスト削減、ROIなどの事業成果を定量的に示した事例は依然として限られています。効率化によって生み出された時間やリソースが、どのように企業価値向上へつながったのかは十分に可視化されていません。今後は、削減した時間を成長領域へ再投資する仕組みや成果指標の設計を進め、生成AI活用を事業成果へ結び付けていくことが重要です。

調査結果のまとめ

今回の定点観測からは、生成AIの利用が全社へ広がる一方で、事業成果への結び付きが十分ではない実態が見えてきました。AIエージェントへの注目は高まっていますが、自律的に判断・実行する高度な活用事例はまだ限定的です。また、効果として示される内容も時間や工数の削減が中心となっています。生成AIの価値を事業成果へつなげるためには、以下の3つの取り組みが重要であると考えます。

1.全社展開の進展に伴うAIガバナンスの高度化

第2回調査でも提言したAIガバナンスは、全社展開が進む今こそ重要性を増している。利用可否を二択で判断するのではなく、利活用の便益と統制のバランスを踏まえた設計が必要である。利用可能なデータや権限、監視・停止条件を全社共通基準として定め、継続的に見直す体制を整備すべきである。

2.AIエージェントの適用業務の精査とBPRの実行

重要なのはAIエージェントを導入することではなく、どの業務をどこまで任せるかを見極めることである。効果を最大化するためには、業務プロセスそのものを見直し、人とAIの役割分担を再設計する必要がある。完了条件や例外処理を含めた抜本的なBPRが、成果創出の鍵となる。

3.削減時間の事業成果への還元と効果の可視化

時間や工数の削減は事業成果ではなく、そのための手段に過ぎない。多くの事例では効率化効果が示される一方、事業成果との関係は明確ではない。削減した時間の活用先を定めるとともに、事業KPIや投資対効果の評価基準を事前に設計し、一体的に測定することが重要である。

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更新日時:2026年9月24日 10時0分