AIが拓く未来と日本の地域

人口減少や人手不足、地域コミュニティの希薄化など、日本の地域社会はさまざまな課題に直面しています。一方で、生成AIをはじめとするデジタル技術の進化は、こうした課題の解決に新たな可能性をもたらすと考えられます。
今回のステークホルダーダイアログでは、情報社会学がご専門で自治体DXの研究・推進などに取り組まれている武蔵大学の庄司昌彦氏と、シビックテックの推進などを通じて地域課題解決に取り組まれているコード・フォー・ジャパンの関治之氏をお招きし、地域社会の現状やAI活用の可能性について大局的な視点から討議し、客観的な立場で忌憚のないご意見をいただきました。

  • 日時:2026年7月3日(金)
  • 出席者:
    【社外有識者】
    庄司 昌彦氏(武蔵大学 社会学部 メディア社会学科教授、総務省「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」座長 ほか)
    関 治之氏(一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事 ほか)
    【TISI株式会社】
    堀内 健司(専務執行役員 広域IT第1事業本部長)
    油谷 実紀(技術本部・ソーシャルイノベーション事業部 エグゼクティブフェロー)
    河村 正和(常務執行役員 企画本部長、コーポレートサステナビリティ推進責任者)
    【ファシリテーター】
    荒木 茂善氏(株式会社クレアン サステナビリティコンサルタント)

出席者

庄司 昌彦氏
武蔵大学 社会学部 メディア社会学科 教授
兼 武蔵学園データサイエンス研究所 副所長
兼 国際大学GLOCOM 主幹研究員
兼 東京大学 空間情報科学研究センター 客員教授

2002年 国際大学GLOCOM研究員(~現在:主幹研究員)、2019年 武蔵大学 社会学部 教授(現職)、2023年 武蔵学園データサイエンス研究所 副所長(現職)、2024年 東京大学 空間情報科学研究センター 客員教授(現職)。

関 治之氏
一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事
兼 株式会社HackCamp 代表取締役会長/CEO ほか

政策起業家・シビックハッカーとして、2011年東日本大震災時にsinsai.infoを立ち上げ、2013年にCode for Japanを設立。デジタル庁シニアエキスパート、神戸市チーフ・イノベーション・オフィサー、東京都チーフデジタルサービスフェローをはじめ、全国の自治体で行政DXを推進。市民参加型の社会課題解決を牽引。

堀内 健司
TISI株式会社 専務執行役員 広域IT第1事業本部長/広域ITソリューション セグメントオーナー

SI事業部、流通サービス事業部などを経て、2021年流通サービス事業本部長、2023年より常務執行役員 首都圏産業事業本部長、2025年より専務執行役員、2026年4月より現職。

油谷 実紀
TISI株式会社 技術本部・ソーシャルイノベーション事業部 エグゼクティブフェロー

新規事業企画や製造業向けシステム構築のプロジェクトマネージャーを経て、2009年戦略技術センター長着任以降、AIサービス事業、大阪・関西万博大阪ヘルスケアパビリオン、会津若松スマートシティ拠点、デジタル社会サービス事業企画組織等、数々の新規の取り組みを企画推進。2025年より技術本部。

河村 正和
TISI株式会社 常務執行役員 企画本部長/コーポレートサステナビリティ推進責任者

金融事業本部などを経て、2017年経営管理部長、2020年執行役員企画本部副本部長、2021年より企画本部長、2024年より常務執行役員。2025年4月より現職。コーポレートサステナビリティ、経営企画、財務・経理、IR・SR、コーポレートガバナンス、知財法務、人材戦略などを担当。

ファシリテーター
荒木 茂善氏
株式会社クレアン サステナビリティコンサルタント

地域課題とAIによる解決の可能性

【河村 正和】

河村:当社グループは、急速な環境変化を踏まえ、戦略リスクやマテリアリティの見直しを進めてきました。その中で大きなテーマとして浮かび上がってきたのがAIです。同時に、今後は「地域事業を持続可能な形でどのように発展させていくか」が、当社グループの経営を左右する重要な戦略課題の一つになるのではないかと考えています。
その背景には、当社グループの事業が、全国の地域のお客様や地域で活躍されている専門家の方々と深く関わっているということがあります。地域がデジタル化やAI活用によって活性化し、成長していくことは、当社グループの成長だけでなく、日本社会全体にとっても重要なテーマだと認識しています。そこで本日は、地域の持続的な発展に向けて、私たちは何を見落としてはならないのか、また、当社グループの視点ではなく、地域の視点からどのような声を受け止めるべきなのか、地域の現場をよくご存じの皆さまとの対話を通じて気づきを得たいと考えております。

庄司:地域の将来を考える上で最も大きな課題は、やはり人口減少の問題ではないでしょうか。行政では「2040年問題」がよく語られますが、支える側の労働人口が減少し、支えられる側が増加します。この人口構造の変化は、私たちが考える以上に深刻に受け止める必要があると思っています。
さらに、単身世帯が増え続けていることも大きな社会課題です。かつては核家族が主流でしたが、今では単身世帯が多数派になり、今後も増加が見込まれています。地域における「自助・共助・公助」を考えたとき、公助は、税収の減少と支出の増加によって厳しさを増しています。また共助についても、地域とのつながりを生み出してきた家族や子どもを介したネットワークが弱まり、地域力そのものが低下していく懸念があります。だからといって、人や機能を大都市へ集約すれば解決するという単純な話でもありません。規模が小さくても魅力的で活力のある企業があるように、地域においても規模の大小ではなく、運営次第で持続的な地域の発展・存続は可能だと考えています。
人口減少時代において、小さくても魅力と活力があり、持続的に発展できる地域社会をどうつくるのか。この問いこそが、これからの地域政策の重要なテーマだと考えます。

関:私たちはシビックテック*1を推進しています。市民の目線から、自治体の方々とともに、地域の課題を自分たち自身でも解決していく取り組みを進めています。その中で、AIによって選択肢が大幅に増えたと感じています。これまでは、アイデア止まりになったり、「誰がやるのか」「お金はどうするのか」というところで止まってしまったりすることが多くありました。しかしAIを活用すれば、エンジニアやデザイナーが足りない状況でも質の高いものが作れるようになってきました。ものを作るという点では、圧倒的に民主化が進んだと感じています。一方で、地方自治体のAI活用を支援する中で課題として感じていることは、AIを積極的に活用する自治体と、環境を整えても活用が進まない自治体との二極化が進んでいることです。また、職員不足や予算不足に悩む自治体も多く、地域の持続的な発展に向けて、この現状を踏まえた支援が必要です。

堀内:地方自治体だけではなく、地域企業の現場でも課題が浮かび上がってきています。当社のお客様である方から、「優秀な学生が東京へ出ていってしまい、地域に戻ってこない」という声をよく聞きます。地域にも魅力的な仕事や研究開発の機会があるものの、その魅力を十分に発信できていないのではないかと感じています。当社グループでは自治体、医療、地銀、電力など地域の基盤を担うお客様を数多く支援していますが、多くの現場で人手不足や運用負荷の増大が課題となっています。
行政分野におけるAI活用については、業務効率化や人手不足対策として取り組む自治体が増えている一方で、住民向けサービスや管理領域への活用はまだ十分に進んでいない状況です。また、AIを含めたITシステムの運用負荷の増大に対応するため、今後は複数の自治体での共同利用や運用支援サービスの提供を強化していきたいと考えています。
医療分野では、全国の大規模病院を中心に、医療情報連携基盤の整備を通じて病院間のデータを統合・蓄積し始めており、これらのデータを活用し、診療の質向上や経営改善につなげる取り組みを進めています。各病院の現場には限られたスタッフで医療の現場を支えているなどさまざまな課題があり、AI活用への期待が高まっています。AIの導入・定着に向けた支援を強化していきたいと考えていますが、実装に向けてはPoC(概念実証)で終わってしまうケースが少なくありません。

荒木:なぜPoC止まりになってしまうのでしょうか。

堀内:その原因には、データが整備されていないこと、人材が不足していること、投資対効果が見えにくいこと、セキュリティへの不安などが挙げられます。結局は、AIを導入するだけでは成果は出ないということだと思います。業務改革やデータ活用とセットで進めなければ難しいのではないでしょうか。

油谷:当社は、Sier*2として開発プロセスにおいてAIを組み込む取り組みを始めていますが、お客様のシステム環境にさまざまな差異が存在しており、最適な形でAIを導入するためのノウハウの蓄積を進めている段階です。また、官民データやオープンデータの活用にも取り組んできました。「エリアデータ利活用サービス」を起点に地域に関するさまざまなデータを組み合わせることで、さらなるサービス創出につなげたいと考えています。
また、地域行政を担う自治体への支援も重要なテーマです。自治体ではセキュリティ対策の強化が求められていますが、情報システム部門の人数が限られており、自力でAIやセキュリティの課題に対応するのは難しい状況です。そのため、広域的な連携や支援の仕組みづくりが必要だと考えています。

*1 シビックテック(Civic Tech)… 市民・NPO・企業など(Civic)がテクノロジー(Technology)を活用して地域や社会の課題解決に取り組むこと。
*2 Sier…System Integrator(システムインテグレーター)の略。企業や官公庁などのITシステムを企画・設計・開発・導入・運用まで一括して請け負う企業

地方におけるAI活用への道筋

【関 治之】

関:AIの登場で、市民レベルでもアイデアを形にできるようになり、課題解決にむけた選択肢が増えた一方で、ビジネスモデルを描くという部分は、まだAIに任せきりにはできません。地域の課題解決や豊かさのためにAIを活用していく合意形成をいかに進めるか、実際に試してみないとわからない部分をいかに先へ進めるか、というところがまさに取り組むべき課題だと思っています。
自治体の職員がAIを使って自らアプリケーションを作れる時代において、「発注する人」「作る人」というこれまでの関係性を変え、一緒に作るというフレームに転換できるかが重要です。

庄司:AIを活用するという話をする前に、「地域をどのような姿にしたいのか」を考え、課題解決した先の姿を共有することが大切です。解決後の姿から逆算すると、その実現手段の多くは、実はAIで対応できるケースが少なくありません。大事なのはAIを見ることではなく、課題を見ることであり、解決後の姿を共有することです。
そのために、地域を支える存在として、地域に根差した有力企業の存在が重要になってくると考えています。行政だけで地域を支えることは難しくなっています。だからこそ、全国規模でなくても、その地域に根差し、雇用を支え、地域への愛着を持ち続ける地元企業が、主体的に地域社会を支えていく役割を担う必要があると思います。

関:さらに言えば、地域課題は一社の企業だけで解決することは困難です。自治体、交通事業者、医療機関、金融機関、地域企業、市民組織など、地域に関わる多様な主体が関わる課題です。
それぞれが別々に動くのではなく、地域全体の未来像を共有し、協力し合える関係づくりが必要です。

荒木:つまり地域全体を巻き込む共創の仕組みが必要ということですね。

関:その通りです。ただし従来からあった形式的な協議会などではなく、本音で話し合える関係性が重要です。10年後にどのような地域を目指すのか。そのビジョンを共有できる場が必要だと思います。

堀内:私どもとしても、関係者で集まって協議を進めるものの、それぞれの組織上の立場や方針から思考がスタートしてしまい、なかなか前に進めない面がありました。お話を聞いて、組織上の役割ではなく、地域と関わりを持った一個人として率直に地域の人々と話し合うことが大切ですね。

「成功事例」と横展開の重要性

関:AI活用を広げるためには、使わない人を無理に説得する必要はありません。無理に全員に使わせるのではなく、「真似をしたい」と思える成功事例を増やして横展開していくことが重要だと考えています。
自治体では、AIを活用する職員が自らアプリケーションを作って課題を解決する事例も生まれていますが、異動や運用体制の問題から継続できないケースが増えています。そのため、運用の仕組みや監査・セキュリティ支援などを整え、職員が作ったものを継続的に活用できる環境づくりが必要です。
AI活用の本質は、これまでのDXと同様に現場の課題を深く理解し、価値のある解決策を小規模でも提供できることにあります。自治体や行政機関の窓口業務をデジタル化する取り組みのように、実際に全国展開された事例も地方自治体から生まれています。小規模自治体の方が新しい取り組みに挑戦しやすい面もあり、地域とのネットワークを持つ企業には、自治体と連携して実証や実装を進める大きな可能性があると考えています。

【堀内 健司】

堀内:「真似をしたい」と思える成功事例を増やすことが重要というのは、まさにその通りだと思います。成功事例が蓄積されることで、技術的な難しさよりも「自分たちにもできるかもしれない」という前向きな意識が生まれます。このような成功体験の積み重ねが自治体にも広がり、AI活用の促進につながるのではないかと考えています。やはり、誰にでもイメージしやすい具体的な事例が最も重要だと感じました。

油谷:当社グループでも現在、AI活用事例を社内で共有する仕組みを整備しています。まず自分たちが実践し、その成果を地域社会へ展開する。そのフィードバックを次の活用に生かす。そうした循環を生み出していきたいと考えています。

成功のカギは人と当事者意識

荒木:ここまでの議論をお聞きしていると、地域の課題を解決するには地域をよくしたいという「当事者意識」が重要なキーワードだと感じました。

関:まさにその通りです。課題に対し、事前に協議会を作り、計画を作り、予算を決めるという従来型の進め方では、AIを活用する利点である流動的でアジャイルな進み方ができず、なかなか成果につながりません。
本当に必要なのは、そういった枠組みではなく、地域の中に入り込み、一緒に悩み、一緒に考え、一緒に行動できる人です。

堀内:たしかに、一つの会社だけでは実現できず、複数の会社による共創プロジェクトのような取り組みを試みてきましたが、各社の思惑が異なることから、なかなか具体的な成果につながりませんでした。一方で、人と人との関係から始まるプロジェクトの方が成功している印象があります。組織の論理だけでは前に進みにくいのかもしれません。

【庄司 昌彦】

庄司:コロナ禍を思い出してください。オンライン授業やペーパーレス化も、「やるしかない」という状況だったから進みました。
つまり重要なのは手段ではなく目的です。AIも同じで、本気で課題を解決しようとするのであれば、やり方はいくらでも変えられます。
AIが進化しても変わらないもの、それは人の熱意です。地域をよくしたいという当事者意識こそが、最高の原動力になります。

地域課題解決と事業性の両立

河村:地域課題の解決は当社グループの重要なテーマであり、自治体向けサービスなどを通じて取り組みを行っていますが、一方で、企業としては、それが事業として成り立つかどうかという視点をどうしても持たざるを得ません。
地域に深く入り込むことはもちろん重要ですが、それだけでは事業の展開を継続していけません。スケールを優先するのか、その地域でやりたいことをやり切るのか。まずその方向性を定めなければ、どこかで立ち行かなくなると考えています。私たち自身の発想や位置づけも、変えていく必要があると感じています。

庄司:おっしゃるとおり、地域の課題解決を持続的なものにするためには、企業が地域を支える役割を担い、それをビジネスとして成立させることが重要です。行政や地域の中間団体の多くは人的リソースが厳しい状況にあります。そのため、企業が地域課題にコミットし、その対価として適正な報酬を得ることで、双方にメリットのある関係を築くことができます。適正な価格設定を行うことも一つの方法です。
もう一つは、地域ごとの課題には個別に向き合いながら、その実装はAIや自動化で効率化し、共通化できる部分は共通の仕組みとして持つというやり方です。個別性と効率を両立させることで、一つの地域から大きな対価を得られなくても、事業として成り立たせやすくなります。
さらに、地域での雇用創出や目に見える成果を積み重ねていくことで、その取り組み自体が社会や市場から正当に評価されるようになると考えています。

【関 治之】

関:地域での取り組みを持続させるためには、社会貢献だけでなく、事業としてサステナブルであることが重要です。ただ、最初から大きな事業性ばかりを追求する必要はありません。CSRには予算的にも構造的にも限界がありますから、CSRをきっかけに始めつつ、最終的にビジネスとして成立させる形であってもよいと思います。
ただ、地域課題の解決と事業化を初期段階から同時に解こうとするのは、複雑な連立方程式を解くようなもので、非常に難しいです。ですから、現場の担当者にはまず地域課題の解決に集中してもらい、事業化や横展開の仕組みづくり、必要な支援は会社が担う。その体制が大切です。さらに、担当者が安心して地域に入り、その成果がキャリアとしても評価される環境を整えるべきだと考えています。
また、このような活動は短期的な利益だけで評価するのではなく、地域との信頼関係やネットワークを企業の将来の成長を支える無形資産として捉えることが重要です。その価値を投資家にも説明できるようになれば、地域への取り組みを継続的に推進しやすくなると考えています。

河村:本日の議論を通し、各地域で課題は異なるものの、根底にある法令や業務には共通部分があり、それぞれの地域の実情に根ざしてカスタマイズしながら、固有の課題と共通する部分との両面からアプローチする必要があることを認識しました。このことは、当社グループにとって非常に意義があることです。当社グループとしてさまざまなステークホルダーに対して説明責任がありますが、こうした取り組みを進めていくことが、事業と課題解決の持続性を示すことになると感じました。

地域へのAI普及に必要なこと

荒木:AI活用を進める上では、セキュリティへの不安もよく耳にします。よくわからないから不安だという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

【油谷 実紀】

油谷:技術的なセキュリティの問題より、実は、住民に受け入れてもらえるかどうかの心理的ハードルの方が高いかもしれません。どんなに優れた技術でも、利用者が不安を感じれば使われません。そのため、AI活用は、はじめから利用者と一緒に作っていくプロセスが重要です。

庄司:攻撃者側も高度化されてきている現状を踏まえると、セキュリティ対策はトラブルが起きる前提で対策を考える必要があり、結局は、セキュリティ事案発生後のオペレーションの問題に行きつきます。
セキュリティ運用は、研修を受けたから安全というものではありません。日頃からどのような意識を持つか、問題が起きたときにどう対応するか、事象発生に気づいたときにどう声をあげやすくするか、そういった組織文化が重要になります。

関:また、安全性を求め規制を厳しくし過ぎると、かえって会社の統制外での個人によるAI利用が増えてしまうという課題があります。ガイドラインによる一定の規制は必要ですが、それだけでは十分ではありません。現場で使いやすい仕組みの整備と利用方法やセキュリティ教育両面のバランスが求められます。

荒木:地域においても、AIリテラシーの高い方は「なぜAIを使わないのか」という話になります。地域全体でAIを活用している人口を増やすにはどうすればよいでしょうか。

【庄司 昌彦】

庄司:自治体の現場、特に高齢者の方々と接していると、AIやデジタルツールを「一人で使いこなさなければならない」と感じてしまい、不安から利用をためらうケースが多いと感じます。「間違った操作をしてしまうのではないか」「情報漏えいにつながるのではないか」といった心理的なハードルが大きいのです。
そのため、個人任せにするのではなく、仲間や地域、行政、地元企業などとつながりながら、一緒に使い、困ったときに相談できる環境をつくることが重要だと考えています。そうした支え合いの仕組みがあれば、利用への不安が和らぎ、「まずは使ってみよう」という気持ちにつながるのではないでしょうか。
加えて、ハルシネーション(もっともらしい誤情報の生成)のようなリスクを正しく理解することが重要です。過度に恐れて利用を制限するのではなく、失敗しても影響が限定的な領域を明確にし、その範囲で活用と検証を重ねながら適切に利用していくべきだと考えます。

関:AI活用を広げる上では、心理的安全性*3が重要だと思います。これまでAIに触れてこなかった人にとっては、今さら始めて失敗する姿を周囲に見られることへの抵抗感があります。そのため、同じレベルの人たちが少人数で学び合える環境は有効だと感じます。
また、特に管理職層では「現状で困っていない」「自分が判断・決裁すればよい」という意識が強く、AI活用の必要性を感じにくい場合もあります。そのため、単にツールを提供するだけでなく、活用する意義を実感できるような働きかけも重要です。

油谷:地域への普及のきっかけとしては、地域の商工会議所や若手経営者のコミュニティなどが入口になるのではないかと考えています。そうした場からAI活用の輪を広げていける可能性があるのではないでしょうか。
当社グループとしても、社内で取り組んできたAI活用事例を、自治体の職員の方々や地域住民の方々にも活用していただけるよう展開していくことが必要だと感じています。

堀内:これまでの経験から、大規模な講演会より顔の見える規模の勉強会の方が、人と人とのつながりが生まれやすいと感じます。
小さな自治体では、一人で取り組んでいたり、得意でない方が推進されていたりします。そういった方向けに、必要な部分に必要なサポートを提供するといった、サービスのシェアリングを検討しなければなりません。

*3 心理的安全性…職場やチームの中で「自分の意見や疑問、失敗を率直に伝えても、拒絶されたり罰せられたりしない」と全員が安心できる状態。

地域社会の発展に向けて

関:AIによって開発そのものは容易になりますが、合意形成や現場への浸透といったボトルネックを解消できなければ、成果の価値は高まりません。重要なのは試行段階で終わらせず、現場と伴走しながらあるべき姿を描き、実現に向けて継続的に取り組むことだと改めて感じました。今は、現場のその場でプロトタイプを作りながら対話できるようになったことで、伴走支援や営業の効率が大きく向上しています。AIはエンジニアの生産性向上だけでなく、営業がエンジニアリングを活用して提案のリードタイムを短縮するための手段としてもますます重要になってくると思います。

庄司:AIの活用は、まさに古生代のカンブリア爆発のように、さまざまな可能性が広がるフェーズに入っていると感じています。ウェブやスマートフォン、SNSが登場した時のように、AIもやがて社会のあらゆる場面に浸透し、仕事の進め方やコミュニケーション、組織のあり方、さらには収益モデルそのものを変えていくと思います。社会実装の分野においても、地域社会やビジネスの仕組みが大きく変わる転換点を迎えているのではないでしょうか。その中で、多様な業界への深い知見を持つSIerとしての実績や経験、さらに北陸・富山という地域に根差した強みは大きなポテンシャルです。グローバル・プラットフォームの提供だけではなく、地域や社会への実装を推進していくことでも、大きな可能性があると感じました。

堀内:本日の一番の気づきは、物事を動かす原動力は組織や仕組みではなく、個人の思いや情熱にあるということです。皆さまと対話する中で、その認識がより確かなものになりました。人の思いが周囲を巻き込み、共感や行動を生み出していくことができるような組織や仕組みづくりが、取り組みを前に進める上で最も大切な要素であると改めて実感しています。

油谷:本日は改めて原点に立ち返り、AIそのものだけでなく、技術をどのように活用して価値につなげていくかを考えるよい機会になりました。
また、当社グループの取り組みとして、各地域の出身者に加え、移住者や現地採用者など、各地域に根差したメンバーが活動を推進していることの重要性も認識しました。自分が生まれ育った地域に貢献したいという思いは自然なものであり、そのような志を持つ方々と連携しながら、地域への貢献につながる活動を今後も進めていきたいと思います。

河村:本日の議論を通じて改めて感じたのは、当事者意識の重要性です。
AIによって社会をよりスムーズにしていくためには、技術だけではなく、地域課題に本気で向き合う人の存在が欠かせません。
当社グループとしても、社会課題の解決と事業化の両立を目指しながら、地域社会の持続的な発展に貢献していきたいと思います。今後のTISIにご期待ください。

PAGE TOP

お問い合わせ
各種お問い合わせページ
お問い合わせフォーム
サービスに関するお問い合わせ
お電話
0800-600-9810
携帯電話
050-5816-9805
受付時間 9:00~12:00 13:00~17:00(土・日・祝日を除く)

更新日時:2026年9月28日 16時4分