トップメッセージ(統合報告書版)

Q.中期経営計画の進捗をどのように評価していますか。

 2027年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画(2024-2026)については、概ね順調に進捗していると評価しています。売上高、営業利益に加えて、ROEやEPSといった経営指標については目標達成が見えてきており、1人当たり営業利益は前倒しで目標を達成しています。サービス型ビジネスの進捗等に課題はあるものの、全体としてはこれまで取り組んできたことが着実に成果として表れています。
 一方で、経営環境は中期経営計画を策定した時点の想定を超えるスピードで変化しています。特にAIの進展により、従来の延長線上の取り組みだけでは次の成長ステージには進めません。2027年3月期は、現中期経営計画をしっかりやり切ると同時に、次期中期経営計画のスタートダッシュにつなげる重要な助走期間であると位置づけています。TISIをグループの中核として、AIを活用した事業モデルの進化、重点領域への戦略投資を進めることで、次の成長に向けた土台を固めていきます。

Q.AIの進展により、事業環境や市場評価は大きく変化しています。現在の状況をどのように受け止めていますか。

 2026年初頭、AIの急速な進化を背景に、ITサービス企業の提供価値や成長性に対する資本市場の見方は、期待から懸念へと大きく変化し、当社の株価もその影響を大きく受けました。株主・投資家の皆様からもご心配の声や厳しいご指摘をいただき、AI時代において当社グループがどのように成長を続けるのかを、より明確に示すべき局面だと受け止めています。
 株価は、株主・投資家の皆様に、当社グループの成長を実感いただく重要な指標の一つだと考えています。日々の株価だけを見て経営判断を行うわけではありませんが、当社グループの将来の可能性に投資し、長期視点で寄り添って応援・期待してくださる株主の皆様に対して、成長の道筋と実績を示すことは、上場企業の経営者としての責任です。そういった意味で、2026年3月に決定した自己株式の取得に関する発表は、当社グループの中長期的な成長力とそれを前提とした本源的価値に対する経営の認識を明確に示す機会の一つと位置付けました。
 ただ、本質的に必要なのは、私たちがどれだけ成長できるかを示すことであり、それが待たれていると強く感じています。株主・投資家の皆様からは、AIによってシステムインテグレーター(SIer)の仕事や既存のシステム開発の価値が低下するのではないか、という声もいただきます。しかし、その見方は、当社グループの事業の本質や成長余地を十分にお伝えしきれていない面もあってのことだと認識しています。
 AIによって、プログラム作成の効率は大きく向上しますが、プログラムを書けることと、基幹システムを構築・運用できることは全く別の話です。お客様の基幹業務を支えるシステムを、安全に、確実に、業務全体と整合させて設計・実装・運用する力の重要性はこれからも変わりません。むしろ、AIを業務プロセスに組み込む時代だからこそ、SIerとして築いてきたシステム全体を設計し、品質を担保し、継続的に運用できる力の価値は高まります。
 AIによる変化を、提供価値と収益モデルを進化させる力として取り込み、当社グループの考えや戦略の方向性を今後も積極的に発信してまいります。

Q.AIがどのようにT I Sインテックグループの成長につながるのでしょうか。

 AIで目指す方向性は大きく二つあります。一つは開発プロセスへの全面的なAI組み込みによる生産性、品質、収益性の向上、もう一つは、お客様の業務プロセスへのAI組み込みによる提供価値の向上です。
 まず、自社の開発プロセスについては、すでにAI駆動開発を進めています。新規開発では、全社開発基盤「AXION」へAIツールを組み込み、特定プロジェクトで47%の生産性向上を確認しています。また、保守開発においてもプロジェクト固有の情報を組み込んだプロジェクト特化型チャット(Agentic RAG)を開発し、顧客プロジェクトでの検証を開始しています。さらに、プロジェクトマネジメントや品質管理においてもAI活用を進め、2030年3月期までに開発生産性50%向上を目指しています。
 AI駆動開発により創出した余力は、より付加価値の高い業務へ振り向けていきます。AIによって開発のやり方は変わりますが、最終的に品質を保証し、お客様に価値を届ける責任があるのは私たちです。
 もう一つの方向性であるお客様への価値提供の向上に目を向けると、AIを単に個別業務へ導入するだけでは十分な効果は得られません。企業の中核となる基幹業務にAIを安全かつ効果的に組み込むためには、業務全体を見渡し、どのプロセスにどのAIを組み込み、どのデータを活用し、どのように安全性や品質を担保するのかを設計する必要があります。
 この点こそ、SIerである私たちの強みを発揮できる領域です。AIを個別ツールとして終わらせるのではなく、お客様の業務の中で実際に機能する形に落とし込むことで、提供価値を高めていきます。

Q.AI時代において業界・業務知見と基幹系領域の強みをどのように競争優位へ転換しますか。

 AI時代の成長機会を、当社グループならではの競争優位に転換する上で重要になるのが、業界・業務知見と基幹系領域の強みです。エージェント型AIが価値を発揮するためにはお客様の業務データや基幹システムとの連携が不可欠です。表面的なAIツールの導入にとどまらず、業務そのものをどう変えるのか、その変革をどのように継続的な成果につなげるのかが問われます。
 当社グループは、金融、産業、公共、ペイメント、ネットワークなど、幅広い業界・領域で業務プロセスに深く関わりながら知見と実績を蓄積してきました。特にペイメント領域では、ミッションクリティカルな基幹システムを長年支えてきた実績があります。こうした業界・業務知見と基幹系領域の強みをAIと掛け合わせることで、当社グループならではのVertical AIサービスを展開していきます。
 お客様へのAI活用支援には、主に三つのアプローチがあります。
 一つ目は当社グループが強みを持つ領域で、AIを活用したサービスを開発し、提供することです。例えばペイメント、ネットワーク等、深い知見を持つ領域では、業界共通の課題を捉え、標準化されたサービスとしていち早く提供できる力があります。すでに2026年1月には、国際クレジットカードのAI不正検知サービスを開始しました。今後も、強みがある領域にAIを組み込み、お客様の実務に深く根差したサービスを提供していきます。
 二つ目が、お客様の業務やシステムに合わせてAIを活用したシステムを構築することです。当社グループは、お客様の基幹システムに深く関わり、全体像を把握した上でAIを組み込むべき領域やアーキテクチャを設計する力を持っています。当社が提供する「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」も、レガシーシステムの刷新を通じてお客様の基幹系領域に深く関わり、その後のAI活用へとつなげる重要な接点になります。
 三つ目が、お客様に対するオンサイト型の支援です。これは、単にお客様の現場でプログラミング業務を担うということではありません。お客様の懐に入り込み、業務プロセスや現場の課題を理解しながら築いてきた信頼関係は、AIを実務に組み込む上で大きな競争優位になります。
 さらにAI活用で重要になるのが、統制が不十分なまま個別のAIが乱立する問題です。部分最適のAI活用が増えるほど、全体としての非効率やセキュリティリスクが高まる可能性があります。こうした課題を全体最適の観点で設計し、実務に耐える形で解決できるのは、ミッションクリティカルな基幹システムを長年手がけてきた私たちの本領です。AIを単なる効率化ツールにとどめず、お客様の業務変革を継続的に支える仕組みとして提供することで、独自の競争優位とストック収益の拡大につなげていきます。

Q.このタイミングでT I Sとインテックが合併してTISIとして始動する意味とは。

 2026年7月1日、TISとインテックが合併してTISI株式会社として新たなスタートを切りました。振り返ると、両社は2008年の経営統合によるITホールディングス株式会社設立以来、同じグループとして歩む中でそれぞれの個性を活かして強みを磨いてきました。その後、グループ一体経営を進め、品質管理や事業連携を強化してきましたが、2社の連携による総和の最大化には、まだ余地があったと言わざるを得ません。
 例えば、TISが得意とする大規模な基幹システム開発とインテックが得意とするオンサイト型の顧客支援を組み合わせれば、お客様への提供価値はさらに高められます。逆に、インテックが持つ顧客接点に、TISの開発力やペイメントをはじめとするサービスを持ち込むこともできます。
 TISIが「One Company」として真に一体となることで、これまでの組織や事業の壁を取り払い、迅速な意思決定と一体的な事業運営のもと、両社が培ってきた事業上の強みを組み合わせて、事業横断でお客様に価値を提供できる体制を確立します。AIによってお客様の変革ニーズが高まる今、基幹システム、オンサイト型の顧客支援、ネットワーク、ペイメント、サービス型ビジネスを組み合わせて、ワンストップでお客様を多面的にご支援できることは、大きな意味を持ちます。
 ここで重要になるのが、「仲間力」です。合併により、異なる強みを持つ“仲間”がより深くつながり、単独では届きにくかった領域にも挑戦することができるようになりました。互いの知見、顧客接点、サービス、技術を持ち寄り、お客様にとってより大きな価値をつくり出すことこそが、TISIにおける仲間力の進化だと考えています。
 TISIの始動を通じて実現したいのは、グループ全体の「総和拡大」です。単に各事業の売上や利益を足し合わせるのではなく、ある事業の強みを別のお客様に展開し、別の事業の顧客接点に新たなサービスを持ち込むことで、全体の成長力を高めていきます。こうした取り組みを通じて、AI時代における新たなビジネスモデルを構築していきます。

Q.重点領域への戦略投資を通じて、収益モデルをどのように多様化していきますか。

 システムインテグレーション(SI)は当社グループの重要な事業基盤であり、今後も高度化していきますが、従来型のSIだけでは安定的な成長は見込めても、成長を加速させるには限界があります。そのため、サービス型ビジネスや、共創・M&Aを通じて事業そのものに関与するビジネスを増やし、収益モデルを多様化していきます。
 これは、グループビジョン2032で掲げる4つの戦略ドメインのうち、特にIT&ビジネスオファリングサービス(IOS)やコ・クリエーションビジネス(CCB)の拡大につながる取り組みです。
 AI時代においては、すでに強みを持つ領域でサービス化を進めるとともに、パートナーとの共創や戦略投資・M&Aも活用しながら、新たな業務領域の知見を取り込んでいきます。
 こうした取り組みの一例として2023年4月、税理士事務所および顧問先企業に会計・税務パッケージを提供する日本ICS株式会社を連結子会社化しました。これにより、税務・会計という事業領域への展開に加え、税理士事務所やその顧問先企業という新たな顧客基盤の獲得につながりました。こうした事業にAIを組み込むことで、サービスの競争力を高め、収益性を向上させることができます。
 また2023年12月には精神科領域に特化して電子カルテを提供する株式会社レスコを連結子会社化し、ヘルスケア領域における事業基盤を強化しています。次期中期経営計画では当社グループが強みを持つペイメント領域に加え、戦略投資を通じて事業基盤を強化してきたヘルスケア領域など、AIによる変革余地が大きい領域に注力し、従来型SIにとどまらない収益モデルを確立していく方針です。

Q.今後の成長戦略を実行する上で、人材や組織能力をどのように変革していきますか。

 AI時代においても、価値創出と競争優位の源泉は人材であることに変わりはありません。ただし、求められる人材の役割は大きく変わります。AIに任せられる業務はAIに任せ、人はより高付加価値な領域を担う。これが、今後の人材・組織変革の基本的な考え方です。
 これからは全社員がAIリテラシーを備え、AIごとの特徴を理解し、どの業務にどのように活用すれば価値につながるのかを判断できることが重要です。開発、運用、営業、管理部門を問わず、AIを業務に組み込み、生産性と提供価値を高める力が必要になります。
 一方で、AIが進化しても、人が担うべき役割はなくなりません。むしろ、お客様の業務や経営課題を理解し、何を変えるべきかを構想し、関係者と議論しながら解決策を形にする力は、これまで以上に重要になります。こうした役割を担うのが、お客様との最前線に立つ人材です。私が社長就任以来、最も重視してきたテーマの一つに「フロントライン」の強化がありますが、AI時代においてその重要性はさらに高まると考えています。今後は、フロントラインでお客様の課題解決をリードする人材、事業創出を担う人材、複数のITスキルを統合して全体を設計できる統合型IT人材を重点的に育成・配置していきます。
 株主・投資家の皆様との対話でもお伝えしている例え話ですが、ファクトリーオートメーションで製造した自動車が故障したとき、その原因を突き止め、分解して修理し、品質を担保するのは人です。ITも同じで、AIが生成したものを人が正しく理解し、品質を保証してこそ、お客様の信頼に応え、社会的責任を果たすことができます。
 AIを人の可能性を広げるものとして活用し、多様な人材が有機的につながって価値を創出することが、競争優位につながります。そのための人材育成をはじめとする戦略的な投資を加速させていきます。
 組織能力の面では、TISIを中核に一体運営を進め、グループ全体でお客様に最適な価値を提供できる組織へ変えていきます。ある領域で培った知見やサービスを別のお客様・別の事業領域に展開し、グループ全体の総和を拡大する。そのような動き方を組織文化として根付かせることが重要です。
 AIを活用した生産性向上と、人が担う高付加価値領域へのシフトを同時に進めることで、成長戦略を実効性あるものとし、1人当たり営業利益のさらなる向上など確かな成果につなげていきます。

Q.現中計で築いた基盤と今後の変革を、どのように持続的な企業価値向上につなげますか。

 ここから問われるのは、現中期経営計画で築いてきた基盤を、持続的な成長につなげられるかどうかです。AIの進展、TISとインテックの合併、重点領域への戦略投資を一体で進め、当社グループの生産性とお客様への提供価値を高めていきます。その積み重ねにより、これまでを上回る力強い成長を実現し、ステークホルダーの皆様と共有している、2033年3月期に連結売上高1兆円規模、連結営業利益1,500億円超というありたい姿を見据え、持続的な企業価値向上につなげていきます。
 重要なのは、掲げた戦略を着実に実行し、成果に結びつけることです。お客様に本気で向き合い、評価をいただき、それを業績につなげる。こうした取り組みを一つひとつ丁寧に積み重ねることで、当社グループの成長力を高めていきます。
 2021年4月の社長就任以来、この5年間で大きな成果の一つと感じているのは、役職員一人ひとりが、トップの指示を待つのではなく、これまで以上に自ら考え、能動的に動くようになってきたことです。現中期経営計画の目標も、策定当時は「今の当社グループには高い目標かもしれない」と感じる部分もありましたし、株主・投資家の皆様にも従来の延長線では達成が困難なチャレンジングなものだと伝えていました。しかし、グループ一丸となって取り組みを進めてきた結果、今ではその目標の達成が見えるところまで来ています。
 この経験を通じて、人は夢やビジョンがなければ高いところを目指すことも、到達することもできないとあらためて強く感じています。だからこそ、社長の最大の仕事は、目指すビジョンや目標を明確に掲げ、自らが先頭に立ち、どんな環境変化の中でもファイティングポーズを取り続けることだと考えています。
 連結売上高1兆円規模、連結営業利益1,500億円超というありたい姿は、決して簡単に実現できるものではありません。それでも私は、TISIの始動を契機に、当社グループをより力強く、より洗練された企業体へと成長させ、次世代にバトンタッチすることが自分の役割だと考えています。
 株主・投資家をはじめ全てのステークホルダーの皆様には、持続的な成長および企業価値向上に向けた当社グループの挑戦にご期待いただき、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2026年9月
代表取締役 社長執行役員

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更新日時:2026年10月22日 15時38分