クリーンコアとは?持続的なビジネス変革を実現する原則と進め方

オンプレミスERPからクラウドERPへの移行が加速する昨今、移行を機にシステムを刷新しようとしても、長年積み上げてきたアドオン・カスタマイズが足かせとなり、スムーズに進められないケースは少なくありません。
また、クラウドERPへ移行した後も、これまでと同じ発想でアドオン・カスタマイズを重ねてしまうと、クラウドERPが本来持つ継続的なアップデートやAI活用といったメリットを十分に享受できなくなります。
その結果、業務改善や新たな取り組みへの対応が遅れ、企業の競争力にも影響を及ぼしかねません。

こうした課題を解決するアプローチとして注目されているのが「クリーンコア(Clean Core)」です。この記事では、クリーンコアの基本概念から必要性に加え、ビジネスにもたらすメリット、クリーンコアを進めるにあたっての5つの原則、具体的な進め方までをわかりやすく解説します。

クリーンコアとは?

クリーンコア(Clean Core)とは、近年SAP社が提唱している考え方のひとつです。
SAPの標準機能を最大限に活用しながら、必要な部分に限って安全に拡張することで、システムの複雑化を防ぎ、将来的なアップグレードや新技術の導入を進めやすくするアプローチを指します。
これを実践することで、システムの俊敏性とコスト効率を高め、継続的なビジネス変革を支えるための基盤構築につながります。

クリーンコアが必要となる理由

従来のERPでは、独自の業務プロセスや業種固有の要件に合わせて、高度なアドオン・カスタマイズを積み重ねるアプローチが一般的でした。これは短期的には柔軟性をもたらす一方で、長期的にはシステムの複雑化を招く要因にもなり得ます。

そして、カスタムコードの層が厚くなるほど保守が難しくなり、アップグレードには多くの時間とコストがかかります。
こうしてシステムの更新や新機能の展開が大がかりになっていった結果、イノベーションのスピードが落ち、変化への迅速な対応の妨げとなっていました。

そこで打ち出されたアプローチがクリーンコアです。不要なアドオン・カスタマイズを整理しながら企業の柔軟性と革新性を高めることで、クラウドERPが提供する継続的なアップデートやAI機能を最大限に活かせる環境を整えることができるのです。

クリーンコアがビジネスにもたらすメリット

クリーンコアの実践は、企業のビジネス基盤に多くのメリットをもたらします。ここでは、特に重要な3つのポイントを解説します。

企業の俊敏性が高まる

すでに設計・検証済みのベストプラクティスである標準プロセスを土台にすることで、価値実現までの期間を短縮しやすくなります。
あわせて、差別化が必要な領域のみを優先的に拡張することで、システムの複雑化を抑えながら、変化への対応スピードを加速させることが可能です。
また、クリーンコアによるデータの合理化とガバナンスの強化が、意思決定の質とスピードを高め、企業全体の俊敏性向上につながります。

最新機能を継続的に活用できる

クリーンコアを維持することで、Business AIをはじめとする新機能を最大限に活用でき、継続的な改善が可能となります。
また、ERPのコア機能の安定性を保ちながら拡張できる前提が整うことで、アップグレードが容易になり、最新のERP機能を活かした業務改善や市場変化への柔軟な対応を継続的に進めることが可能です。

保守負荷を抑え、安定的に運用できる

システムを標準化し、不要な複雑さを取り除くことで、保守負荷と運用コストを抑えられます。
さらに、アドオン・カスタマイズの最小化は、運用リスクやサイバーセキュリティリスクの軽減にも効果的です。
このような安定した運用基盤が、企業の継続的な成長を支える土台となります。

クリーンコアの5つの基本原則

クリーンコアは、「ビジネスプロセス」「拡張性」「データ」「統合」「運用」という5つの領域にわたる基本原則で構成されています。
それぞれの原則を理解し、実践することがクリーンコアを定着させる上で重要となります。

クリーンコアの5つの基本原則

ビジネスプロセス

クリーンコアの基本原則のひとつが「ビジネスプロセス」です。クリーンなビジネスプロセスとは、SAP標準への準拠を徹底し、競争力を確保しながらシステムの複雑化を抑えるプロセスを指します。
そのうえで、各プロセスの役割と責任を明確にし、フローや実行状況を継続的に文書化・測定することで、現場の実態をデータで把握し、改善につなげます。

拡張性

「拡張性」も、クリーンコアの基本原則のひとつです。クリーンな拡張機能とは、リリース済みAPIを通じてコアと切り離された状態で実装される拡張機能を指します。拡張は利用技術やAPIによって4段階のクリーンコアレベルに分類されます。中でも、クリーンコアとして認められるのは上位2つのレベルです。

より高いクリーンコアレベルを実現するためには、明確なガバナンスのもと、オンスタック拡張(SAPシステム内で行う拡張)またはSAP®  Business Technology Platform(SAP BTP)を活用したSide-by-Side拡張(外部プラットフォーム上で行う拡張)を適切に組み合わせることが必要です。これによって、技術的負債を管理・最小化することができます。

データ

クリーンコアの基本原則として「データ」も挙げられます。クリーンなデータとは、高い品質基準を満たし、法令に準拠した状態が維持されているデータを指します。
その実現には、継続的な管理と、組織に定着したデータガバナンスの仕組みが不可欠です。データ品質やガバナンス、保護、効率性を重視した基盤を整えることで、AI活用や分析の精度向上、運用コスト削減、法令遵守の実現につながります。

統合

「統合」も、クリーンコアの基本原則のひとつです。クリーンな統合とは、安全性とスケーラビリティを備えた標準テクノロジーを土台に、堅牢で信頼性が高く、持続可能なシステム連携を実現するアプローチを意味します。
標準化されたAPIや標準的なイベント連携の仕組みを活用して、システム間のつながりをシンプルかつ安定した形で保ちながら、継続的なシステム刷新とガバナンス体制を確立します。

運用

クリーンコアの基本原則として「運用」が挙げられます。クリーンな運用とは、ガバナンス・人材・プロセス・ツールの各領域にベストプラクティスを取り込み、ビジネス変革につながるIT運用を実現するための組織横断的な取り組みです。
継続的な改善やセキュアな運用・素早いデリバリーを推進しながら、ITと事業部門が密に連携することで、環境変化にも柔軟に対応できる運用基盤を築きます。

クリーンコアの進め方

クリーンコアを実現するには、段階的なアプローチで取り組むことが効果的です。以下の4つのステップを起点に、自社の状況に合わせて進めていきましょう。

【Step1】現状のアドオン・カスタマイズを棚卸しして評価する

クリーンコアを進めるにあたって、まずはERPシステムを監査し、どのアドオン・カスタマイズが本当に必要かを見極めることから始めます。
アドオン・カスタマイズの現状を整理した上で、標準機能やクラウド拡張に置き換え可能なものを切り分けることが重要です。この棚卸し作業が、以降のステップをスムーズに進めるための土台となります。

【Step2】Fit to Standardを徹底し、標準化を優先する

次に、業務プロセスをERPの標準機能に合わせて設計するFit to Standardの考え方を徹底し、独自開発よりも標準機能の活用を優先します。
差別化されないプロセスは標準を基本とし、本当に差別化が必要な領域に絞って調整することで、システムの複雑化を防ぎながらクラウドERPの価値を最大限に引き出すことができます。

【Step3】コアを保ちながらオンスタック拡張、Side-by-Side拡張を活用する

ERPコアを直接変更するのではなく、リリース済APIやSAP BTPを活用してカスタムアプリケーションやカスタム統合を構築します。
リリース済みAPIを活用した「クリーンな拡張」の考え方を基本とし、オンスタック拡張とSide-by-Side拡張を適材適所で使い分けることで、より高いクリーンコアレベルを実現させ、システムの安定性と業務要件の両立を図ることがポイントです。

【Step4】アジャイル思考で継続改善を定着させる

クリーンコアは、一度実現して終わりではなく、継続的に改善し続けることを前提とした取り組みです。
ITと事業部門の連携を重視しながら、評価と改善を繰り返す運用モデルを組み込み、変化への対応力を持続的に高めていくことが重要です。

クリーンコアを起点に、変化に強く俊敏な経営基盤へ

クリーンコアを定着させるには、5つの基本原則を踏まえ、現状評価から標準化、拡張設計、運用定着までを一貫して進めることが重要です。
一方、クリーンコアの重要性は多くの企業が認識しながらも、SAP R/3やECC時代から長年にわたり積み上げてきた大量のアドオン資産を前に対応をあきらめざるを得ない企業も少なくありません。

TISIは、 この大量のアドオンのソースコードをSAP S/4HANA標準のATC(ABAP Test Cockpit)によるチェック結果を入力データとして、TISI独自開発のABAP自動変換ツールを用いてアドオン修正を自動処理する「SAP S/4HANAアドオンclean core化サービス」を提供しています。

従来、人手に頼らざるを得なかったクリーンコア対応に対し、自動変換ツールを利用することで、コスト・期間・品質の課題を解決します。
クリーンコアの実現・定着を目指すなら、ぜひTISIにご相談ください。

※ 本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。
※ 記載されている情報は、2026年7月時点のものです。また、TISIの見解・解釈を含んでおりますので、詳細・最新の情報は公式サイトをご参照ください。

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更新日時:2026年7月27日 15時8分